柔術・古武術・秘伝の探求

八光流柔術の道場「やわらいしゃ」のブログです

後二方投と合気道の影響

以前にも下記リンクの記事で書いたことですが、現在普及している「後二方投」と言う技は初代宗家が解説教本で示した足捌きとは全く違う運足で行われています。

 

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https://yawaraisha.hatenablog.com/entry/2024/07/20/163019

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八光流柔術において「前二方投」「後二方投」と言う技がありますが、これらは大東流合気道における四方投と同系統の技です。八光流においても奥傳技になると四方投と記され「前二方投」「後二方投」と言う表現はなくなります。(二段技の教本でも二つの技を四方投と称すると言う記述がありますが、二段技の場合、○二方投と呼ぶことが多い様に感じます)

この様な状況なので、そもそも混同や混乱が生じやすいと言えます。実際、多くの方が当たり前の様に、合気道で言うところの四方投(裏)に倣った足捌きで後二方投を稽古しています。

数年前に本部で開催された基本技統一セミナーにおいても若い指導者は相手と背中合わせになりながら、相手の背後に入って行く足捌きで「後二方」の解説をしていたので、もはや現代八光流のスタンダードと言っても過言ではなりません。

合気道八光流よりも遥かに普及した流派なので技術面でも精神面でも一定の影響を受けるのは致し方ないことだと思いますが、本来の技の在り方を忘れ去ったまま他流の取口が定着しているであるならば、情けないと言う他ないでしょう。

ただし、私の主張の拠り所になっているのは、初代宗家が遺された通信教本だけなので、昔から(はじめから、創流当初から)ずっと背中合わせに背後を取る足捌きであったかも知れません。因みに10年ほど前に宗家(二代龍峰)先生がアメリカで技術解説をしている動画を見ると、(大柄な相手との間合いを踏まえた)アレンジは加わっているものの通信教本の足捌きに近しい運足をされていました。

初代宗家の教本を読み解くと「前二方投」では片手取から殴り掛かってくる相手に対して、その足下を掠める様に身を沈めています。一方で「後二方投」では両手首を掴む相手に対して、相手の掴み手の外側で身を沈めながら技を掛けています。

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「前二方投」では殴りかかる拍子に前に踏み込んでいますが、「後二方投」ではガッツリ掴んで近づかせない相手に対して、彼我の境界線の後方で技に入ります。コレが本来の「後二方投」と言うのが私の解釈です。初代宗家が二つの技で掴み方まで変えたのは、技の意図を明確に示すためではないでしょうか?

掴み手の違いに言及しましたが、両手首を持たれたからと言って、相手に近づけない訳ではありません。奥傳「八光投」は、まさに両手掴みに対する投技ですが、前二方投と同じく相手足元を掠めます。「二方投」が入っているのは二段技なので、基本技の習得を通じて間合いの違い、前後進退の変化を伝えたかったのだと思います。

しかし、初段技、二段技には「後二方投」の他にも合気道の影響を強く感じる技が幾つかあります。

合気道の技自体が悪い訳ではありませんが、違う理論に基づく技の混入は流儀の理解にとってはノイズとなります。応用技として参考にするに止めて八光流本来の基本を遵守すべきと思います。しかしながら、現状は先程述べた通りです。何処までリカバリーが可能か?難しい課題だと思います。