柔術・古武術・秘伝の探求

八光流柔術の道場「やわらいしゃ」のブログです

あのび体操

皇方護身体操の中の簡約体操をアレンジして、私が実践しているエクササイズです。名前の由来は「欠伸」と「伸び」を組み合わせて「あのび」です。ユックリと身体の内側を伸ばしていく様子が「欠伸や伸びをしているイメージ」に近いので、勝手にそう呼んでいます。

皇方護身体操には、簡約体操(4形)、本体操(12形)、脊柱運動ほかの付随する鍛錬法があります。

資料を見てイミテートをしているだけでは分かりませんが、護身体操は非常に体力を削られる体操法です。少なくとも2019年から八光流総本部で公式に復活した護身体操の講習を受講した方ならば同じ感想を持つ筈です。

この講習会で教えられた内容は、三段会ある教習課程の第一段階だと聞いていましたが、教えられた内容が衝撃的過ぎて、レッスンの第一段階とは思えませんでした。残念ながら、同講習会は担当師範の隊長不良もあり直近1年ぐらいは開催されていません。もしかしたら、この先二度と開催される事はないかも知れません。

私は護身体操の講習会を修了した後にコミュニティ内の限定的なイベントとして一般の方(全て女性でした)向けにセミナーを開催した事がありますが、運動強度が強すぎたのか?セミナー後、ほぼ全員が疲労困憊の状態でした。

このセミナーで取り組んだのが、最も基本的な簡約体操と言う形でした。呼吸に合わせて身体を開いて伸ばす動作が4種類あります。1セットが数十秒で完結します。12本の本運動と比べればシンプルで激しい動作は一切ないのですが、普段使わない身体の内側の筋肉を刺激するので、予想以上に疲れた様です。

私自身は今でもほぼ毎日、護身体操に取り組んでいますが、やり方は少しアレンジを加えています。最も大きなアレンジはスピードです。八光流総本部の講習で教えられた方法よりもスピードをかなり遅くして実践しています。担当師範によるとレッスンの第二段階で教える予定の上級向けの形ではスピードにリズムをつけて鍛錬するそうです。少しだけ見せて頂いた事がありますが、自分には出来ないな〜っと思いました。

それもあって自分の身体にあった方法としてスローペースの護身体操を続けています。

特に重点的に実践しているのは、簡約体操です。先程も書きましたが1セット数十秒で完結するので、本当に気軽に継続できます。

そして、ユックリと身体の深部を解きほぐす様に行うと本当に気持ちが良いです。また、基本の動きに捻りを加えたり、上体を傾けたり、立ち方を変えてみたり色々な応用も可能なので、時間のある時は少し負荷の強いエクササイズを取り入れます。

非常に良いエクササイズなので、機会があれば、また一般向けのセミナーをしたいな〜っと考えています。まあ、機会があれば、、、ですね。

 

 

 

 

【 稽古メモ&稽古予告 】

一応、ブログでも稽古会の告知をします。

 

10月前半までのテーマ
塩を摘む動き
身体の回し方と足捌き
高野豆腐をイメージした相手への接触

 

9/30, 10/7 11:00-13:00
10/15 13:00-15:00
場所は神田駅周辺
体験希望者はメールでお知らせ下さい。

yawaraisha@gmail.com
 

稽古場所は参加予定者に個別に通知します。

体験参加は初回無料で承ります。

体験の方には基本的な技からお伝えします。

 

#八光流

#やわらいしゃ

崩しのリズム

相手の身体にアプローチしてから、相手が崩れるまでに少しの時間差があります。その時間差を待ちきれずに動き過ぎると、せっかく相手に掛かった崩しがリセットされます。
崩しが上手くいかない人は、自分の動きを止めて待つ練習が有効かも知れません。慣れてくると崩しのリズムが身に付いてきます。

柔居舎では「小手先の技」と言って体幹体幹に近い大きな筋肉を動かずに、小手先の動き、場合によっては指先の動きで相手を崩す稽古を行っています。

こう言う稽古はコツを掴むまでは難しいと思いますが、何が正解か?が理解出来れば、自分たちの稽古グループで稽古ができます。コツは「正直さ」「忍耐強さ」だと思います。崩れていない時は、その旨を相手にハッキリと伝える事、そして技が上手く出来ない現実を受け入れる事が重要だと思います。

 

八光捕と合気上げ

八光流は世間的には大東流の分派と言う評価を受けています。しかしながら、八光流には大東流の殆どの会派で稽古している「合気上げ」がありません。

その代わりに「八光捕」と言う基本技があります。八光捕も合気上げも相手に両手首を掴まれた状況に対処する技ですが、大東流の合気上げが相手の掴みを解かずにコントロールするのに対して、八光捕は相手の掴みを完全に外す事を目的にしていて、この点で大東流の合気上げとは対照的な技となっています。

しかし技の難易度に関して言えば「合気上げ」の方は圧倒的に難しいと思います。八光捕は掴みを外すだけで良いのですが、合気上げは掴ませたままの状態で相手をコントロールするので、より高度な技術が必要です。

それでは八光流では相手のコントロールを全く考慮していないのか?と言えば、そんな事はありません。何故なら「八光捕」と言う技名の中にある「捕らえる」の文字は相手の制御を示唆しています。単純な手解きの技であれば「八光抜」あるいは「八光解き」と言う名前が妥当でしょう。

そして、八光捕に続き「手鏡」「膝固」「合気投」あるいは「八光攻」と言った基本技では相手に掴ませた状態でのコントロールがメインテーマです。

「八光捕」をあえて、手を解き切る処で終わらせる技にしたのは、段階的な技術習得を見据えた初代宗家の深謀遠慮だと考えています。稽古をしながら初代宗家の思考をトレースして行くのも八光流を稽古する楽しみの一つです。

 

逆水平ではなく袈裟斬りだった?

八光流初段技に「立ち当」と言う技がありますが、手順を説明すると・・・

①相手が右手で自分の左手首を掴んで殴りかかって来たら②左足を一足分だけ外側に踏み出しながら③左手を自分の右肩口辺りまで引き上げて、相手の掴みを外し④そのまま相手の眼の下当たりに手刀で当身をする技です。

非常にシンプルな手順で誰にでも簡単に覚えられる技です。しかしながら、相手が本気で掴んで来た場合、手解きから当身にスムーズに移行出来るか?っと言われると少し疑問が残ります。体格・体力が同程度ならば一定程度の効果はあると思います。また、手刀による反撃を考慮しなければ、相手の掴みを解く事は、それほど難しくないでしょう。

ただし、掴みを外してから当身までを流れる様にスムーズに行おうとすると少し難易度が上がります。この技は一見するとプロレス技の逆水平チョップに似た動きに見えますが、逆水平の様な掴まれた手を大きく後ろに引こうとすると相手に押し込まれて自分の体勢が崩れます。相手が掴んでいる手で身体ごと抑えつけて来ると水平運動では対応出来ません。

実は「逆水平的なスイング運動」を脱却する事が、この技における大きな分岐点となる!っと言う事に気付いたのが、つい最近。合気道龍の安藤師範が合気道の側面入身投の非接触バージョンをやっている動画を眺めていた時に剣術稽古で学んだ「あの技」と動きが似ているな〜っと思い、軽く身体を動かした瞬間に思いつきました。

安藤師範の動きも一見すると逆水平的な印象を受けますが、相手から遠い側の身体の動きが重要だと感じました。そこで得た気付きを八光流の「立ち当」に当てはめると、手刀は霞の位置に取り上げて袈裟に切り下ろす位で丁度良い気がします。

相手に近い方の足を外に踏み出す動作も袈裟切りと組み合わせると合理性が増してきます。

この気付きを得た時、正に剣の理合だな〜っと独りで悦に浸っていましたが、八光流の宗家に最も近い師範に袈裟切りの話をすると「我が意を得たり」とばかりに色々と付属する技を教えて貰いました。

八光流柔術は見た目では歩法、足捌きが殆ど認められないのですが、シッカリと日本古来の剣理が埋め込まれている事を再確認。この手の話をしても通じる人は他に多くはいません。彼の様な人が宗家先生のサポート役に就いていないと、宗家の技も伝わりにくいかも知れないですが、激務で体調を崩し気味なので少し休んだ方が良さそうです。

技は学べる時に学んでおいた方が良いですね。昨年の四段技セミナーと、今年行われた初段技から三段技セミナーは宗家先生が講習を務め大変に素晴らしい内容でした。来年も同じセミナーが開催される保証はないので受講しておいて良かったと思います。

 

 

 

 

 

弾く技、切り落とす技、引き寄せる技

2023年8月までの稽古を通して、色々な気付き、発見がありましたが、それらを総合して考えると、改めて八光流柔術の技の構造、習得段階を認識出来たと実感しています。

細かな点から始めると説明が長くなり過ぎるので概略から入ると、八光流柔術の習得には3つの段階があり、最初の段階で「相手を外側(真下)へ弾く技」を学び、次に「真っ直ぐに切り落とす技」、最後に「相手の懐に引き寄せる技」を学ぶと言うのが現在の認識です。

しかしながら、少し前までは「引き寄せる技」が認識の中になかったです。勿論、個別の技やテクニックの中に、引いて仕掛ける技、相手をいなす技もありますが、八光流を大きな視点で捉えると「相手を弾く、真下に潰す、切り落とす」のが八光流の本領と考えていました。

ところで今年は、3月、7月、8月と宗家先生の一般技セミナーが開催されましたが、3月に開催された初段技講習会では宗家先生の技に違和感を覚えたものの何が違うのか?理解出来ませんでした。

実は宗家先生が初段技、二段技と言った基本技をセミナー形式で教えるのは極めて稀な事で、私も初めての機会だったので楽しみにしていたのですが、3月の初段技セミナーで示された技は「自分達の技とは違う」と言う違和感の塊。

感覚的に「力の流れが逆」だと認識したのですが、初段技セミナーの時点では違和感の正体を掴み切れませんでした。しかし、宗家先生の技を「引き寄せる技」の視点で振り返ると少しだけ構造が見えてくる気がします。全て理解できた訳ではないですが、6月頃から「引き寄せる技」を意識し始めていたので二段技、三段技のセミナーでは初段技セミナーの時と比べて理解度が抜群に上がりました。

「引き寄せる技」は言わば、術式反転の技だと思います。入門以来、学んで来た技とは出力する力の流れが逆転するイメージです。今までも部分的に引き寄せるテクニックを使う場面があったかも知れません。しかし技術習得の段階として「引き寄せる技」を認識した事で新たなアプローチが見えた気がします。

 

 

 

 

 

親指殺しの技

八光流柔術の二段技、つまり最もベーシックな初段技を修了した後に学ぶ型の1本目に「松葉捕」と言う技があります。どんな技かと言えば、相手の親指を折る(脱臼させる)技です。おそらく、大東流にも合気道にもない八光流独特の技だと思いますが、実に危険で、それが故に実用性の高い技です。

しかしながら「松葉捕」の正しい使い方を知らない門人も少なくありません。と言いますか、存命も方でオリジナルの松葉捕を知っている方の方が少ないでしょう。その理由は、、、

前回の記事で登場した寺澤交山先生が腕試し目的で入門してくる人達の親指を片っ端から折ってしまったので禁じ手になったと聞いています。寺澤先生ご本人から伺った話です。多少の誇張はあると思いますが事故が多発したのは事実の様です。実際、松葉捕で暴漢?を撃退した話も伺っています。

公共施設の利用を巡って他団体(超メジャー武道)の代表者が某師範に絡んで来て、手首を思いっ切り掴んで「技をかけてみろ」と凄んだ瞬間に手を松葉捕の形で振り上げた瞬間、掴んだ手を離して親指を押さえながら真っ青な顔で去って行ったそうです。本来の松葉捕は掴まれた手首に、空いている手を添えて両手でかける技です。しかし、この時は片手を差し上げた時点で技が完結したの事。技をかけた師範にしてみれば、松葉捕で仕留めようと言う意図すらなく、ただ掴まれた手首を振り解こうとした所、相手の掴む力が強烈過ぎたので自然に技が入ってしまった様です。

そう言う訳である時期を堺に松葉捕を教えないか、教えたとしても親指殺しの部分を省いたマイルドな形で伝えられます。最近の本部道場ではオリジナルの松葉捕も復活させている様ですが、人によっては間違った方法も散見されるので完全復活には至っていないのでしょう。

教本は見ながら個人的に研究されている方もいると思いますが、一瞬で親指関節が裂ける状態にならなければ、何処かが間違っています。危険な技なので、あまり熱心に取り組まれない方が良いと思います。因みに私自身は得意技の一つですが、普段の稽古では取り扱いません。

連休中で少し考える時間と記事を書く時間が確保出来たので昨日に続いての連投になります。このblogは基本的に文字だけにしようと考えています。その方が負担も少なく気楽に続けられそうなので。